スーパー雷鳥殺人事件


今回は西村京太郎サスペンスの長編推理小説から"スーパー雷鳥殺人事件"を書くことに。これは通学途中の駅前にある古本屋でバスや電車の待ち時間などに少しづつ読んていたもので、ぶつ切れになって内容の呑み込みにあやふやなところがあるけどまぁ。


それにしてもこのタイトルの"スーパー雷鳥"は今はないJR特急種別。専用の車両だったけど、現在は塗装変更して"しらさぎ"の一部として運用してるようで。まぁ、先頭と最後尾の形が違うのが印象的だったな。小説の中に出てくる米原と北陸を結ぶ"加越"も車両は標準の485系だったけど種別としては消滅。現在の北陸本線の特急で西側を走るのは大阪発着の"サンダーバード"と"雷鳥"の2本体制と"しらさぎ"のみになってしまったけど。以前は同じ485系車両でも季節によっては派手な塗装の"きらめき"や"かがやき"もあったけどそれも全部なくなったし。まぁ、この作品が出た92年頃は色んなのがあったけど、特急街道と言っても大分統一された感じがする。余談はそんなところで内容にでも。


佐々木貢は東尋坊で自殺する気だった。30歳で大手商事会社の係長になり、生活や交際にも何の不満もなかった。だが突然人生に嫌気がさして酒に溺れバクチに手を出すようになってやがて借金を抱えるようになった。佐々木は会社を辞めて退職金で借金を返し、身の回りの整理をすると京都からスーパー雷鳥3号に乗った。佐々木は自殺する前に大学時代生活した京都に寄ってから東尋坊に行くことにしたのだ。
佐々木は隣に座って来た話好きの男に返事するのが面倒だったため席を立ってラウンジでコーヒーを飲みながら煙草を吸った。福井に近づいた頃、4,50代の中年の男がラウンジに入ってきた。明らかに様子が変で佐々木に"助けてくれ・・・"と近づいてくる。佐々木は応答を求めるが男は助けてくれと言うだけだ。そして"これを・・・"と手紙を佐々木に渡すと男は倒れてものを言わなくなってしまった。その時女性がラウンジに入ってきて悲鳴をあげた。佐々木は警察に通報するよう言った。


佐々木は福井県警に連れて行かれ、県警の田嶋刑事に訊問された。佐々木は殺された男と関係ないと主張したが警察は信じなかった。殺害されたのは池辺康夫と聞かされた。犯人である証拠がないため佐々木は解放されたが、福井にいるように言われたため福井の旅館に泊まることにした。
佐々木は旅館に着くと例の手紙を開けてみた。すると"私は池辺康夫、池辺興産の社長をしている。私は遠からず殺される。犯人は妻の冴子か、義兄の檜垣か、副社長の柴田だ。顧問弁護士の森谷かもしれない。これを警察に話したところで皆いい人を装ってるから信じないだろう。私は家族を誰も信じていないし友達もいない。だから見ず知らずのあなたに頼むしかなかった。カードに1千万預金してあるからそれを使って私を殺した犯人を見つけてほしい。"と書いてあった。これを見ると佐々木を面倒なことに巻き込まれた苛立ちと、池辺家をめぐる事情への興味の両方が襲った。


その時部屋の電話が鳴った。顧問弁護士の森谷という男で話をしたいということだった。佐々木は森谷のいるホテルで話した。旅館に帰ると荷物が荒らされていた。おかみに聞くと佐々木の知り合いと名乗る女が忘れ物を届けると部屋に行ったらしい。どうやら佐々木が貰った手紙を狙ったらしい。しかし佐々木は手紙を持って出ていた。
佐々木は東尋坊に行くことにした。福井に来たからには東尋坊に行きたいと思ったのだ。岸壁に立っていると女から声をかけられた。池辺のことを色々聞いてきたが、その時サングラスの男に見張られていることに気付いた。サングラスの男はいなくなったが、女が去ると目の前にサングラスの男が現れた。さっきの女と何を話したか聞かれ、何も話していないと答えると脅して殴りかかってきた。


佐々木は気を失ったが、意識が戻るとレストランに行った。するとさっきの女が入ってきた。佐々木には気付かないようで、コーヒーを飲むとサンドイッチには手をつけず店を出て行った。佐々木は後をつけることにした。しかし、女は車に乗ったため、佐々木は丁度来たタクシーをつかまえて尾行した。女は福井駅で"加越10号"の米原までの切符を買った。佐々木も切符を買い、時間があったので旅館の支払いなどをして乗った。4号車のグリーンに女は乗っていたが、同時にサングラスの男も乗っていた。佐々木は米原に着くまで身を隠した。長浜を出て米原に着く頃にグリーンの方に行くと騒ぎが起きていた。トイレの前でサングラスの男が背中を刺されて殺されていた。女のことが気になり隅々探したが女の姿はなかった。女は途中で降りたのだ。佐々木は女が途中で降りたため新幹線には乗れないことを読んで米原で一夜を明かすと、翌日新幹線ホームで待った。すると女が現れ東京行"こだま"に乗った。佐々木も乗り女の隣に座って話しかけた。途中で降りたことを問い詰め、東京のホテルに着いて話をした。しかし、女は西条美穂という名と池辺は学費を出してもらった恩者であることまでしか言わなかった。その後、サングラスの男は水田征一郎と言う私立探偵と分かった。


佐々木は手紙を貰ったが、ここにはないと言った。再び部屋に来ると佐々木が寝ている間に女は手紙を持って行った。それは佐々木がすり替えた偽の手紙だった。佐々木の策略通りだった。
翌日、甲州街道の明大付近の違法駐車をレッカー移動する際に死体が発見された。殺されたのは森谷という男だった。警視庁の十津川と亀井が森谷弁護士事務所を調べると、引出しから"私が殺されたら犯人は森谷だ"と書かれた池辺の手紙が見つかった。
十津川は捜査を進め、冴子と檜垣に会った後で、佐々木と会うことにした。佐々木は待ち合わせの四ツ谷駅のホームで一人で来ていることを確認して会った。十津川は事件のことを聞いたが佐々木は何も答えなかった。十津川は信用しなかったが帰ると、佐々木は新宿に行き、刑事が尾行しているのを察して映画館に入った。映画が終わると受付に刑事の尾行を知らせる手紙が女から届いていた。


それを知った十津川たちは女を調べることにした。調査で西条美穂は池辺康夫の運転手だった西条の妹で、西条は池辺と釣りに行った時に池辺を助けるために川に流されて命を失ったことが分かった。それもあり池辺は美穂を可愛がっていたらしい。周りへの調査でOLであることが分かり、その会社に問い合わせると兄がなくなって突然辞めたという。しかし、誰に聞いても居場所は分からなかった。
一方、佐々木は手紙を書いていた。森谷が犯人と名指す手紙を美穂に盗ませた結果森谷は殺された。佐々木は一人一人の反応を見たいと思ったのだ。だが同じ方法はできないため、冴子と檜垣、そして柴田に柴田が犯人と名指した手紙を送り付けることにした。もう一通十津川警部宛にも出し、他の3通は速達で出した。池辺の筆跡には特徴があったため真似るのは楽だった。
その夜、美穂が佐々木を訪ねてバーで話した。佐々木は十津川と会ったことを話したが、美穂のことは言わなかったと言った。


翌日、例の手紙が届くことになったが何の変化もなかった。夜に十津川から勝手な行動を止めるよう戒めの電話があったが、佐々木は笑い飛ばした。その翌日、朝食へエレベータに乗ると追って乗ってきた男が"佐々木さんだね"と言うと佐々木に殴りかかってきた。何度も殴り、1階に着くと男は出て行った。
佐々木は肋骨が2本折れて入院することになった。十津川と亀井が見舞いついでに戒めの言葉をかけたが、佐々木は強情に何も話さなかった。しかし隣のベッドは空いていて、扉に鍵がかからず、夜になると誰でも入ってこられることに恐怖が増して行った。


十津川は念のために佐々木の病院前に刑事を置いて、佐々木に再び会った。十津川は佐々木が偽の手紙を書いたと推理したが、最初は認めずまだ意地を張っていたが、刑事を引き揚げさせるとそそのかすと佐々木は手紙を書いたことを認めた。全員に出したことで佐々木を襲った男が断定できなかった。
十津川は犯人と名指された柴田の身が気になった。会社に電話したが19時で誰もいず、家に電話すると奥さんはお得意先の人とクラブに行ってると言う。まだクラブには来てなかったが、21時頃にかけなおすと来ていた。しかし、人前では何も話さないと悟り、安否を確かめると電話を切った。日付が変わって1時頃に柴田の自宅に再びかけるとまだ帰ってなかった。しかし、帰りが遅い時もあると奥さんは焦っていない。クラブにかけたが誰も出なかった。十津川は不安が大きくなった。電話がないので4時にかけなおしてもまだ帰っていなかった。奥さんも不安になっていた。しかし、柴田の消息は分からぬまま夜が明けた。


6時頃になると銀座の路上に雨に打たれて倒れている男を警官が発見した。酔っ払いが寝ていると思ったが、背中にナイフが刺さって血が流れていた。落ちていた免許証から身元は柴田と分かった。血は雨に流されて証拠も消されていた。十津川が行くと死亡推定時刻は1時頃だった。一緒に飲んだ得意先のデパート販売員を訪ねると、看板の0時まで飲んで別れ、お得意の車は呼んだが柴田は野暮用があると歩いて行ったという。飲んでいたクラブでも同じ答えでデートの約束だと思っていたようである。
解剖に駆けつけた奥さんに昨日の柴田のことを聞いたが、手紙も知らず変わった様子はなかったと言う。柴田は冷静を装っていたのか。


十津川たちは仲間割れによる事件の線も調べたが、数日後、檜垣が自宅で背中に包丁を刺されて殺害されているのが発見された。刑事がゴミ箱に破いて捨ててある紙切れを発見した。それを繋ぎ合わせると檜垣が犯人と名指した手紙が出来上がった。その時、冴子が慌ただしく入ってきた。冴子の香水が部屋に残っていた香水と同じ匂いだった。池辺殺しは遺産の相続によるものだと考えられたため、残ったのは冴子だけであった。十津川たちは佐々木に会いに行ったが、今度は自分は書いていないという。筆跡鑑定の結果でも3回目は違った。檜垣の死亡推定時刻は前日の21時頃だった。冴子にアリバイを聞くと友人と食事をして、その後クラブで飲んでいたという。クラブのママは証言をしたが、調べるとママには借金があり、冴子からの融通の話で偽証をしたと言う。津田という弁護士が提案し、その弁護士を問い詰めると認めた。これによって十津川は檜垣殺しに関して冴子の逮捕状を取った。


すると、遺言状がないことが不思議になっていたが、遺言状が見つかったと内田という弁護士が発表した。それには最も信頼している西条の妹の美穂に全ての財産を贈ると書いてあった。佐々木は新聞でその記事を見たが、美穂から会って欲しいと電話があった。佐々木は品川のホテルで美穂に合うと祝杯をあげた。しかし、佐々木は意識が遠のいていった。
目を覚ますと十津川がいた。佐々木は屋上の隅に寝かされていて、目を覚ますとふらついて下に落ちるように殺されかけていたと言う。その間に美穂は取材を受けているためアリバイができる寸法である。
内田弁護士に尋ねると美穂は成田空港で海外旅行に発つことになっており、飛行機の時間を教えてくれた。十津川たちが待ち伏せていると美穂は現れた。美穂は表情を変えなかったが、佐々木が目の前に現れると堪忍した様子を見せた。十津川は美穂を逮捕して事件は解決した。池辺は段々美穂も信じられなくなり、社会事業に寄付するという新しい遺言状を書いたため、気が離れていくのに気づいた美穂は遺産の権利がなくなる前に早く池辺を殺そうとしたのだという。


この小説の感想はまず沢山殺されすぎだなと言うのがあるか。そして、読んだ後にゆっくり考えてみると佐々木は主人公的な始まりで自殺することになってたし、池辺冴子は最初から疑われていた四人で残った一人が犯人なのは推理小説としてはあっさり過ぎるところからも登場人物上、西条美穂しかあり得ない展開だったんだな。津田と内田の弁護士は後から出てきたし。推理しながら読んで行かないし、推理小説は好きだけど頭が悪いから自分は推理系には向いてないかも。(苦笑)ミステリーツアーでも最終的に分かったような分からなかったようなだったし^^;。
それにしても今回はストーリーは面白かったけど、金をめぐってのドロドロとした関係の話は気分が良くないね。そういう意味では富裕に越したことはないけど資産家まで来ると良くなさそう。でもここから得たことは信用されることの意味かな。この話では最初は信用していた西条美穂も信用しなくなってるけど、これは池辺康夫が疑い深い人柄だっただけでなく、いくら信用されていても一度失った信用はなかなか取り戻せるものではないし。自分の戒めとしても信用してくれる人を裏切ったり騙したりしないようにこれから気を付けていこ。