十三号独房の問題 part1


ネタもこれと言ってないし、親の本棚にしまい込んであった古い推理小説を読んだレビューと言うのか内容でも書いてみようかなと。まぁ、長編は読むのも結構時間がかかるし、ちょっと読みたいって時に読みやすい短編ものを。今回のは江戸川乱歩編集の「世界短編傑作集1」に収録されたものから興味を持った"十三号独房の問題"。この作品の作者は有名なタイタニックの事故で亡くなったらしい"ジャック・フットレル"とかいう人。


主人公である"オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン"は著名な科学者で、やがて肩書はアルファベット全文字を使っても足りぬ程の功績を残していた。彼は「思考機械」と呼ばれており、研究の没頭しているため、よく会う知り合いは同じく名高い科学者の"ランサム博士"と"フィールディング氏"くらいであった。
或る日、彼らはまた3人で討議を行っていた。話題は「思考能力は全てを支配できるか」の議論になり、思考機械はこれを肯定して譲らない。その証明として刑務所の監房から脱出してみせると言い張るのである。2人はその主張を信用しないため、思考機械は実験として"チッザム刑務所"で1週間後に脱出する約束をする。


実験の条件は死刑囚と同じ待遇。しかし、思考機械は"歯磨き粉"と、"5ドル紙幣1枚と10ドル紙幣2枚"、"靴を磨いてもらいたい"とする3つの要求を提示。要求は許可され死刑囚が拘禁される十三号監房に収容されることに。「僕をこんなところで拘禁できると思ってるのかね?」と思考機械は強気である。思考機械は所長が去る時に「1週間後の夜8時半に所長室室に現れる」と約束をする。


刑務所は頑丈な花崗岩造りの四階建てで、敷地の周囲には高い石塀が巡らされ、表面は平滑で熟練者でもよじ登れないほどで、更にそのてっぺんには先端の鋭い鉄棒がずらりと植え込まれている。建物と石塀の間には前庭があって、運動を許された囚人の散歩場所になっていた。前庭には監視人が東西南北分かれて24時間巡査していた。夜間にはアーク灯が煌々と照らされていた。電線が建物の外壁を這い上がって、最上階より更に上に突き出た電柱を伝ってアーク灯まで届いている。


思考機械は最初に構内の様子を頭にしまい込んだ。同時に、間近に聞こえる発動機船のエンジン音と、空へ飛んで行く水鳥の羽音で石塀のすぐ外を大きな河が流れているのを知った。更にその方角から子供の遊ぶ声がバットの音に混じって聞こえてくるので河と刑務所の間に広い広場があって、子供の野球場に使われていることも知った。また、この刑務所は脱獄防止に完璧の設備を誇っていることも調べた。その中で、電線は近くで地面に達していることを考え、価値ある発見とした。更には、この官房が所長室と同一階にあるため、高い位置にないことが伺われた。


次に、官房に着くまでの順序を考えた。まず、門衛の詰所が石塀の一部にあり、そこに鋼鉄造りの頑丈な門が2じゅうの鍵を備えていた。ここには常時門衛が見張っており、鍵を鳴らして一人づつ出入りを許していた。玄関から所長室へはのぞき孔のついた鉄扉があり、そこから監房へは廊下にある木製と鉄製2つの扉があり、監房のドアにも二重の鍵がついていた。つまり七か所の関門があることなった。
食事は朝6時、昼12時、夜6時に食事が運ばれ、夜9時に点検が行われる以外は外部との交渉はなかった。
監房は殺風景で鉄製ベットがぽつんと置いてあるだけだった。看守は食事している間傍に立っている。


これらを整理し、今度は実地検分に取りかかった。終えると何かを発見した様子だった。考え込んでいるとネズミが現れた。その物陰を覗くと多くのネズミの目がこちらを見ているのが伺えた。監房のドアは下に隙間があった。彼はネズミを脅かしてみたが、ドアから逃げ出したのは全くいない。しかし、1匹たりとも残らず消え去っていた。通り穴が空いているに違いないと思って探してみると、使わなくなった排水パイプを見つけた。


正午の食事の際に彼は4年前に石塀を新しくしたこと、7年くらい前に排水設備を変えたこと、河と子供の遊び場があることの確認を聞きだした。彼はその後ネズミ退治に躍起になっていた。
その日の午後、前庭の監視人が十三号監房から落ちてくる白いものを拾った。5ドル紙幣を巻いた、ワイシャツ生地を切り裂いたらしきリンネル片で、異様なインキで書かれた暗号文らしきものが書かれていた。表面には「ランサム博士に届けてほしい」と書いてあった。受け取った所長は、何故ランサム博士に宛てたのか、ペンをどのようにして手に入れたのが不思議に思った。


今日はここまでを。