外房線60秒の罠


1ヶ月ぐらい前に読んだ"京やん"こと西村京太郎サスペンスの推理小説の新作。(多分)就活が複数重なる時の合間は一度帰る訳にもいかないので大抵本屋の立ち読みで時間潰しすることがほとんどなのですが、特にこれを読んだ時は3時間くらいの時間差があったため1冊読み切ってしまった。鉄道が好きなこともあるから最近は西村京太郎サスペンスにはまっているけど、この日は本屋の店員から迷惑だっただろうな^^;。
今回は簡潔に書いてみる。


プロローグ。1分間、電話で話していることを考えてみると1分とは意外と長いものである。
主人公の井口勲はある大手自動車に勤める社員である。この井口には同じ会社に勤める永野由香里という彼女がいたが2年前に殺害された。ある土曜日、井口は由香里とデートした時の記憶を思い出すため鴨川シーワールドに出かけた。しかし、本当は同僚の中本と二人で行く予定だったが、突然中本が「都合が悪くなったから一人で行ってくれ」と言うのだ。井口は由香里との記憶を辿るには一人の方が良いと思った。


井口は東京駅の京葉線外房線が発着する地下ホームから"特急 ビューさざなみ5号"に乗り込んだ。内房線には"さざなみ"と"ビューさざなみ"の2つの特急があるが、古い車両の"さざなみ"は途中から停車駅が多いため"ビューさざなみ"に乗った。白と群青に黄色のラインが入ったカラーで、由香里と来た時にはなかった車両である。
井口は海を眺めていたが、途中館山で下車した。由香里と来た時もここで降りて、寿司を食べたのである。この日は由香里と来た時と同じ行動をしようと思った。


街をぶらぶらした後はまた内房線の電車に乗って安房鴨川駅へ向かった。あの時は駅前にある喫茶店に入った。井口はその日と同じように喫茶店に入ってコーヒーを頼んだ。
すると知らない女性から鴨川シーワールドへの行き方を尋ねられた。井口はバスを教えたが、自分も行くところだったので、一緒に行くことになった。鴨川シーワールドでは由香里と来た時と同じようにまずイルカのショーを観た。すると遠くにサングラスをかけて顔が見えないが、中本にそっくりな人がいるのが目に入った。しかし、中本は用事があると言ったのである。そこにいるはずはないのだ。


井口は前と同じように女性とレストランに入って、前と同じ料理を注文した。ここで彼女は橋爪亜季と名前を語り、記念にと井口を携帯の写真で撮り、名刺を受け取った。
帰りは外房線の"ビューわかしお24号"で東京駅の地下ホームで二人は別れた。東京駅に着いたのは19時35分である。
翌々日の月曜日、井口が出勤すると警視庁の十津川警部が待っていた。応接室に呼ばれ、昨日、橋爪亜季が代々木公園で殺害されているのが発見されたと言う。しかも、井口の名刺と井口の写真が撮られた携帯を持っているのだ。警察はシーワールドで一緒に過ごした井口が交際の誘いに代々木公園に呼び、断られた腹いせに殺害したと井口を疑っている。


井口は霊安室で亜季の遺体を確認した。しかし、井口はこの人は鴨川シーワールドで出会った女性とは違うと言う。橋爪亜季の遺体から証拠が発見されているため、井口が容疑者であるのは間違いないがおかしなことである。十津川と亀井は井口の言葉を信用しなかったが、三田村刑事と北条早苗刑事は井口が嘘をついてるとは思えず調査することになった。
三田村・北条の両刑事は井口への信用を明確にするため井口を連れて再び鴨川シーワールドへ行く。鴨川シーワールドのレストランの店員に橋爪亜季の写真を見てもらうと、はっきりとは覚えていないが、井口と来た女性は高価な指輪をしていたため印象に残っていると言う。代々木公園で殺害された女性から指輪は発見されなかった。井口の証言が事実であることが証明され、橋爪亜季と別人である可能性が出たのだ。


しかし大事なことを忘れていた。もし、亜季と別人とするとこれは見ず知らずの人の証言となる。この証言をした店員の身が危ない。彼女の身を守るのを忘れていたのだ。店員の家に電話したが繋がらない。2人の刑事に不安が過る。翌日になったが、鴨川シーワールドに彼女は出勤していない。刑事たちの不安はますます大きくなったが、その日の午後に不吉な予感は当たり、佐藤晴美の名のレストラン店員の遺体が河川敷で見つかった。橋爪亜季が別人である証言をした口封じに殺害されたのだ。


これを偶然だと思えない十津川警部と亀井刑事は井口の証言を信用するようになり、橋爪亜季が秘書をする人材派遣会社に聞き込みをする。この人材派遣会社には他に優秀な若杉慶と売れないタレントの木村寛がいて、若杉は社長が姪である橋爪亜季をちやほやしていることに不満を持つ動機を持っているが二人ともアリバイがある。
唯一の証言もなくなってしまい井口が不利なことに変わりはない。この派遣会社と井口が勤める自動車会社との接点はない。人材派遣会社の社長・沢田文子も井口が犯人だろうと主張する。
しかし、社長が席を外した隙に社長が管理するパソコンを覗き見るとヘッドハンティングの事実が判明した。各会社の優秀な人材をピックアップして他の会社へ紹介しているのだ。しかもそのリストの中に繋がりのないはずの井口の同僚の中本の名前があった。


亡くなった由香里は最初は中本と付き合っていて、後から井口が加わって中本は由香里と井口の交際を喜んで認めていたが井口が由香里を奪い取った形である。また、橋爪亜季は調べによると車で死亡事故を起こしている。更には社長は亜季に高級マンションまで買い与えているのだ。いくら姪を可愛がっているとは言っても過剰である。
更に調べを進めると沢田文子が人材派遣会社を始めた頃、経営が傾いた時に会社に亜季の親から借金をしてやっと立て直したことがあるのである。沢田文子は橋爪亜季にこれをネタに揺すられていたのである。


中本が井口に罪を被せる動機も、沢田文子が橋爪亜季を憎む動機も一致した。井口の自己調査により、シーワールドで出会った橋爪亜季を名乗る女が人材派遣会社で働く一人の川上英子と言う名だと言うことも判明した。井口は逮捕することを促すが、証拠がなければ追い込むことはできない。
井口は警察が動かないなら自分から捕まえに行くという。十津川は井口に罠をかけられた仕返しに逆の罠を仕掛けることを誘う。橋爪亜季を名乗る女が川上英子だと分かったため、この女の口封じをすると踏んだのである。


東京駅地下ホームに着く"ビューわかしお24号"は土休日ダイヤだと19時35分着だが、平日ダイヤだと19時34分と1分早く着く。井口は中本に「明日3月12日の水曜日に僕は鴨川シーワールドから帰って真相を話すから、川上英子と東京駅地下ホームの先頭で19時35分に待っていてほしい」と電話した。これに対し中本は沢田社長に「井口はビューわかしお24号の到着時間が平日と土休日で変わることを知らない。彼は19時35分に着くと思っている。つまり僕には1分間の時間がある。この間に空になった車内に川上英子を連れ込んで殺害して戻れば約束通りの時間に待っていたことになる」と言うと社長は「上手くやってくれと」と答えた。


十津川はホームを乗客の流れに逆らって走る時間と殺害する時間、先頭まで戻る時間を計算すると限界を5両目と予測した。3月12日、"ビューさざなみ24号"が東京駅に到着すると中本は川上英子を連れて終着に着いて降りる乗客に紛れて5両目に乗り込み川上英子を殺害しようとした。その瞬間に潜んでいた刑事が中本を逮捕した。
橋爪亜季を殺害したのは中本と組んで沢田社長が、永野由香里の殺害は井口に奪われた中本の嫉妬によるものだった。


簡潔にまとめたつもりだったけど、要点を集めただけでもさすがに長編小説を1回でまとめるのは大分かかるな。今は中古本屋で売っている"スーパー雷鳥殺人事件"を読んでるけど、もしこれを最後まで読めたら今度はまた何度かに分けて簡潔に書くとかまた変えてみるか。